千葉市美術館 伊藤若冲 アナザーワールド 前期

#その他芸術、アート

滅多に無い規模の若冲展ということで、行って参りました。千葉は都会ですけど、適度に土地に余裕があるといいますか、いい所ですよね(^_^)

最初においてあった「寿老人・孔雀・菊図」は、まさに若冲らしいぬめっと、生き生きとした、滴り落ちそうな墨の感じが特徴の水墨画。
この展覧会は若冲の水墨画に焦点を当てたもので、この作品はまさに水墨宣言といえるでしょう。

若冲の種本ですとか、影響と受けたと思われる画家を執拗に並べた展覧会で、若冲における特異だとか、いや、孤立した画家ではない、といった議論はブルックナーを思い出させます。二人とも、本質的に社交性もある宗教家なんですねぇ。

若冲が生まれた年に没した光琳は、呉服のデザインを絵に写したような人でしたけど、若冲においては欄間のデザインが一つの原点だったらしく「欄間図式」はその種本。
「鶏図押絵貼屏風」は塗り残しが切り絵の様で、欄間っぽかったかも知れません?
あとはアイデンティティとしては、青物問屋である、という原点を常に忘れなかった人のようです。
「果蔬涅槃図」がみずみずしい野菜の涅槃図で、家業繁栄を願ったのだろう、とのことです。

水墨画では鶴亭という人の影響が強いらしく、その「松竹梅図」ですとか、竹の簡素でシャープな造形が、清新な感じで良かったです。

鶴亭という人は中国の南蘋派の画家だったそうで、若冲の「月夜白梅図」ですとか梅の力強い管の巻き方といいますか、中国っぽかったです。この絵は表具が孔雀の羽を金であしらった豪華なもので、綺麗でした。
この南蘋派ですとか、若冲はあたらし物好きの人だな、という印象も、展覧会を通して強かったです。

「拾得及び鶏図」は緻密な描写かと思えば、簡素に描かれた淡いひよこがかわいらしい図。
この図に限らず若冲にはこの極端にも思える両面があるのですが、これは若冲の、物をずっと観察していたら、そのものの「神気」が見えるようになった、といった言葉から解釈できるように思います。

この「神気」は、同じく宋学の影響を受けていた、芭蕉の「本情」と大体同じものだと思うので、再び「意識と本質」の視点から、若冲の作品を本質を描きつけた絵画としてみますと、緻密な描写に徹したものは、フウィーヤ(個体的リアリティー)を只管描く事によってマーヒーヤ(普遍的本質)を描いたものであり、デフォルメされたものは、マーヒーヤ(から受けた印象)をそのまま画幅に描き取ったものといえるのではないでしょうか。

また「樹下雄鶏図屏風」という面白い作品が展示されていて、これは雄の鶏が着地した瞬間を描いているのですが、絵が静的で、体が変に折れ曲がっているように見える作品です。
これは本質を観照する際の「意識の原点」である「未発」状態の心が、静的なものである事と、対応しているのだと思います。(意識と本質 85ページ前後)

「払子図」は添えられた無染浄善の書が、活字体の範囲の中で只管うねるような字で、面白かったです。
「梅鶴図」は一円相のような丸い鶴で、線の細くなったり太くなったりだけで、かなり魅せます。

「石灯籠図屏風」はスーラがどうかといわれていたような気がした、点描の作品。詫びた雰囲気に、思わず「うちの菩提寺です」と言いたくなる感じの、風が吹いていた様に思います。

「樹花鳥獣図屏風」は極樂鳥が舞うパラダイスで、やっぱり仏教的な絵のようです。やはり離れてみると面白くて、特徴的な枡目描きがもやっとしていて、超現実感をさらに高めていたように思います。朝鮮の紙織画の影響があるそうです。

「松に亀図」は亀が描かれていたので、この前の北斎と比較してみたのですが、こちらは淡くてのっそりしていて、かわいらしいですね。

「蓮池図」は寂滅の境地を思わせる、空白の多い蓮図。寺に描いた絵で、禅的なものですが、この絵の範囲で言えば、井筒俊彦風にいえば静か過ぎるという感じで、禅の活発々地とした部分が足りない感じもします。
今回の展覧会で思ったんですけど、若冲の絵はどれだけ構図が奇抜で極彩色でも、その本質は精進料理のような気がします(^_^;)いや、精進料理にも豪華な物があるそうですが(笑)

「群鶏図押絵貼屏風」は羽の部分が鞭のような図で、波頭が燃え盛っている様な表現です。鶏は若冲の言うような、神気を図にしやすかった画題だったのかもしれませんね。

この日は講演があったのですが、展覧会を観終わって、講演一時間前に行ってみると、既に定員満杯。芸術関連ですとか、知識が増えると楽しみが減るようなことが、私は多いので、これも縁ですかね、と思いつつ帰宅。

感想を綺麗にいえば、南極でオーロラを観た感じの展覧会でしょうか。寂とした世界に、気韻が漲り、時に極彩色が乗ってくる、若冲の人としての深みも感じる展覧会でした。個人所有の出展品も凄く多くて、苦労されたと思います。ありがとうございました。

併設の「江戸みやげ 所蔵浮世絵名品選」では奥村政信「禿三幅対」がくだけた美人画で、けれんの世界に帰って来た気がしました(笑)とはいえ、気品は素晴らしく、仏像のような美しさがあったと思います。
鈴木春信の「見立孟宗」は筍がにょきにょき生えてきた、という説話を女性化して描いたもの。最早何でもありで、最近のアニメ・漫画の女性化ものは、徹底した所が足りないような気すらします(^_^;)
女性化というとまったく関係ないですけど、あずまんが大王ですけど、あれは僕は普通の男子学生がしているような会話を、女学生に置き換えて物語化したようなところがある作品だと思っているんですよね。そういう系列の一番のヒット作なのではないでしょうか???

喜多川歌麿の「谷風と金太郎の首引き」は、筋肉もりもり且骨っぽい、江戸時代の力感表現が面白い作品。
歌川国貞(初代)の「江戸自慢 開帳の朝参」は高枕だけではなく、現代人が使っているような枕も使っていて、一安心?

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