はパイプオルガンのコンクール密着のドキュメンタリー。
パイプオルガンはそもそも教会とセットの物ですが、現代では楽器そのものとしての存在感も高まっています。教会文化、楽器としてのポテンシャル、その未来、と現代においてパイプオルガンを純粋に楽器として選択する意味、などをコンクールの向こうに感じさせる感じです。
アルシー・クリスⅢは25歳の黒人男性。白人ばかりの審査員を見て黒人も入れるべきだとぼやきます。わたしはこういうコンクールはブラインドでやるべきだと考えます。音楽以外の情報はバイアスに他なりません。そろそろそういう形式になるのではないでしょうか。
ユアン・シェンは31歳の女性で中国の電子オルガンのパイオニアの娘さんとのこと。一人っ子政策の大変さを感じさせます。
検索すると日本の大学で博士号を取得しているらしい。日本に縁の深い人なんですね。
やっぱり中国の人だけあってランランと共通したものも感じましたね。それはすなわち流れのある生動感です。
セバスチャン・ハインドルは19歳。いかにもドイツ人でバッハゆかりの教会出身。しかし二次選考で脱落。うまいけど何か生命力そのものが弱そうな感じの人だなという雰囲気も……。
番組いわく選考の基準は不明とのことで技術的には皆伯仲しています。ブラインドでないのでいかにもな出自がマイナスに働いたのではないかなどとも感じてしまうのですが、ブラインドであれば考えなくて良いことです。
ニコラス・カポゾーリは24歳のアメリカ人。ジョン・ケージの曲を選択して芸域を広げようとします。
現代音楽は結構選ばれていましたけど、パイプオルガンそのものが不協和音のようなところがあるので不協和音がそれほど気にならないというか。そういう特性を感じました。
見事3位に入賞。
ユアン・シェンは聴衆賞を獲得。
優勝はアルシー・クリスⅢ。どうもメジャーデビューを果たして現在活躍しているようで、CDが発売されているようですね。
黒人だからと安直に受け取られるとぼやいて悩みつつも決勝ではジャズナンバーを選曲。パイプオルガンのジャズは独特な響きで楽しいですね。ゴスペルのような雰囲気です。音楽の楽しみで選ぶのであればこの人を一位にするべきです。
比較してユアン・シェンの技術は素晴らしかったですけど、音楽を楽しむという点でアルシーに劣っていたことが浮き彫りになったような気がします。そういう面ではランランも多少頑張ってる感じはありますよね。
パイプオルガンの新たな展開に注目させられる、音楽の楽しみが詰まったドキュメンタリーでした。
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