伊福部昭 鬢多々良

#その他音楽

最近「伊福部昭の宇宙」を全部では無いですけど読みました。伊福部昭さんは、地方と中央、アマチュア出身と音楽学校出身、と二重に楽壇の主流と対称的だったということが書かれていましたが、それらのアンチテーゼに堕さずに音楽の本流を突き詰めて行った所が氏の魅力です。自身の土俗性が生まれ育った環境に由来するとも言っていらっしゃいましたが、そういう自らの素直な感覚に拠っていたから、流行に流されるような事が無かったのだと思います。

ヴァイオリンソナタが最高です。これほど血のたぎるヴァイオリンソナタが今まで有ったでしょうか(いや、無い)
伊福部先生の器楽曲は特異で面白いです。
第二楽章は緩徐楽章ですが、相変わらず大自然の中で野宿をしているような気分にさせられる(素晴らしい)音楽です。ヴァイオリンが切なげにたっぷり歌っていて演奏も見事です。
第三楽章は舞曲風で、真ん中の緩所を挟んで踊り狂って居ます。
「韃靼人の踊り」なんていう曲が有りましたけど、この曲の方が曲名から受ける感じと一致しています。韃靼人を女真族と捉えれば北海道に近いですし、伊福部流の混血理論風にいえば、大体同じといっても良いのではないでしょうか(適当)
「サハリン島土民の三つの揺籃歌」は詩は伝承詩に拠っているようですが、低音部の動き等に伊福部さんの個性を感じますので、曲は少なくとも伊福部さんの手が入ってはいるようです。
声の底で何かが胎動しているような子守唄で、良い曲ですが、伊福部さんの声楽曲は実演の方が映えますね。実演だと地味な所が重厚な迫力になるのですが、録音だと少し野暮ったく聴こえる所も有ります。良いオーディオでガンガン鳴らせば違うのかもしれませんけど(笑)
郢曲「鬢多々良」は相変わらず雅楽器と上手く調和した曲で、間の生かし方が素晴らしく、尚且ちゃんと今の音楽になって居ます。郢曲という分野は中国と天竺の旋法がごったになっていたとの事で、コーダのオスティナートは何時もの伊福部節ですが、なんとなく中国風に聴こえます。
伊福部音楽の多彩さと独自性を満喫できるCDでありました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました