「フォリス」は現代音楽的ですが、その中では親しみやすい部類のものでしょう。客席でずっと集中して聴く気にはなりませんが、断片的には内容のある場面が多く、間が音を引き立てている(間は音に引き立てられきっていないような気がします)武満らしい曲です。弾き手の情熱が音楽に息吹きを与えています。
「ギターのための12の歌」はポピュラー楽曲をギター用に編曲したもので、武満徹らしい朴訥としてて楽しい曲が多いです。こういう編曲もするんですね(好ましい)
「ロンドンデリーの歌」はアイルランド民謡が原曲です。アイルランド民謡はヨナ抜き音階を使用している曲が有る等、日本の民謡との共通点が指摘されていますが、それだけで無しに日本的な情緒を感じます。甘美なメロディーが素晴らしいです。解説を読むとかなり武満さんが独自の編曲を行ったらしく、そのせいも有るのかもしれません。
「早春武」はどこまでが武満徹の編曲なのか福田進一の表現なのか分かりませんが、現代的な侘びが入っていて、雰囲気満点で素晴らしいのは確かです(笑)
ビートルズの諸曲は原曲の良さに武満の叙情的な才能が合わさって、実に見事でした。ビートルズは昔良く聴きましたけど、やはり名曲揃いです。
「全ては薄明の中でⅠ」は曖昧なロマンティシズムが耳に心地良いです。特に第四楽章は柔らかい優しさがあります。聴いた後も胸に好ましい余韻が残っているのを感じます。
「エキノクス」はやや現代音楽らしさを取り戻していますが、底には親しみ易さが有ります。
現代音楽というものの一つの評価の方向性として、現代音楽的な表面を保ちつつ俗な楽しさをそうとは見えない様に練り込んだものが評価される、ということがあると良く感じます。武満の良さは正にそこにあると思いますし、この曲にもそういう要素を感じます。まとまりの無い音が気紛れに奏されるだけなんですが、かなり楽しく聴けます。良く聴くともしかしたら、それぞれの音は長い間を通して繋がっているのかもしれません。
レオ・ブローウェル作曲の「HIKA」は武満さんの緒曲を聴いてからだと、饒舌で焦っている様にも聴こえてしまいますが、聴いたタイミングが余り良くなかったかもしれませんね。
実にギターに即した作りをされている曲集です。大人の音楽を聴きたいが、晦渋なのはちょっとと思われる方にはオススメです。
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