平櫛田中彫刻美術館 仏像インスピレーション

#その他芸術、アート

行って参りました。
展覧会の前に、公開されている旧平櫛田中邸内を見ました。中に図書スペースがあって、歳を取っても盛んな人の雑誌の特集、ということで、朝比奈隆、小倉遊亀、やなせたかし、といった人と共に享年107歳の平櫛田中さんが載っていました。
全然売れない平櫛田中さんが「売れるような作品を作らないで、売れないような作品を作れ」との岡倉天心の言葉で開眼した、とありましたが、要するに芸術家は自分に忠実である以外に術が無いということではないでしょうか(^_^;)

庭にあった、武原はんさんを彫る予定だったという、巨大な楠木の材には、これが彫刻のもとになるのか、と感嘆しました。

本展の方は、まず有名なロダンの「考える人」があったんですけど、やっぱり良い彫刻でした。結構細身で、絶妙な彫りの深さで、ヨーロッパ的なかっこ良さが詰まっていました。動きもある彫刻で、地獄を見下ろすダンテを彫ったものらしく、下を向いていて、何かずり落ちそうではらはらしました(^_^;)

一階には色々な日本の作家の彫刻があったんですが、石井鶴三の「島崎藤村像」辺りが、丁寧な彫りで良い佇まいだったかもしれません。

何に釣られて行ったかといえば、やはり円空仏で、「不動明王像」はど迫力と、頭上の炎がただ生成りを大きく残しているだけ、といった適当さの按配が良かったです(笑)はす向かえにあった長谷川栄作の「引接」という大きな女性像が、リアルで怖く、思わず泣きそうになってしまったんですが、円空は最高の力強さと親しみやすさを同時に持っている所が素晴らしいな、と再確認しました。

両脇を固める「制吒迦童子像」と「衿羯羅童子像」が片腕しか彫られていなくてドキッとしたのですが、省略したのか意味があるのかは分かりません。

「龍頭観音像」も頭の上が伸びていて何層にもなっている、魁偉で独創的な容で、彫刻を総覧したしたような展覧会だから感じたんですが、円空はやっぱり創造力が桁違いだと思います。ごつごつした外見なんですけど、感じた事をそのままいえば、清冽な彫刻です。

高橋法山の「僧形像」という坐っているお坊さんの小さな彫刻も、柔らかい衣の彫りとどっしりした佇まいが見事です。

桑原巨手の「陽炎」が見た瞬間、これは、と思わせる出来で、この前の小倉遊亀さんの「涼」と同じ様な、軽さを感じさせる作品でした。
何でも古の彫刻を研究した結果、軽さを意識したそうです。そういえば小倉さんも古典を研究した人だったなぁ、と思い出しました。この作品に比べると、同時代の多くの作品は鈍重ですね。
飛ぶ様に少女が駆け回っている風な作品です。

最近話題の薮内佐斗司さんの作品もありました。得意の童子像の「こぼすな様」と「守銭童子」があって、結構かわいらしかったです(笑)童子像ははっきりいって自身像だと思うんですが、木喰さんとかも、自分の顔ばっかり彫っていたのではないか、という様な気がしますので、もしかして伝統的な在り方なのかもしれません(笑)
薮内さんといえば「せんとくん」ですけど個人的には、あの絶妙な違和感は流石にプロの仕事である、と感嘆を禁じえません(笑)公募ではまず出ない味わいだと思います。経済効果も計り知れなかったようです。

木喰仏もあって、これも素晴らしかったです。「如意輪観音菩薩」がいつもの福福とした作品で、実際観ても素晴らしいんですが、観終わった後に、歩いている様な何気無い時に胸にふっと浮かぶんですよね。本物の真心が通っている作品だから、と思いたいです(笑)

地下には最近の作家の像があったんですけど、前衛的なのは良いんですけど、どれも楽しくないんですよね。古典的な彫刻が持っている楽しさは、凄く価値があるものだと思っていますので、そういうものを受け継いだ近代彫刻が見たいですねぇ。
彫刻を幅広く集めた、良い展覧会だったと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました