この無料の展示が、非常に楽しみにしていたもので、目玉は初代広重の「霧中朝桜」です。この絵を広告の端っこに見つけて、これは、これは、と釘付けになっていました(笑)
広重の肉筆画、いわゆる天童ものを集めた展覧会に前に行きましたけど、工房で量産したものらしく(内藤正人著「浮世絵再発見」の中の説。とはいえ太田記念美術館のこの展覧会のページでは「歴代の広重が一筆一筆直に描いた」と展示品を紹介しています)、創意に欠けている様な物もありました。この絵も描かれた時期は知りませんが、端から端まで広重の世界だというのは、確かです。
うっすらした桜から自然の圧倒的な美しさが放たれていて、人界全てを祝福する様で(多分)、桜ですが正月の気分にぴったりです。
電脳コイルを思い出させる霧中の人々も、影だけなのに表情が絶品です。
光琳のぼんやりとした描写にはとりあえず品と寛ぎを感じますが、広重のそれには、柔らかい儚さを感じます。そしてそれに浸り切らない爽やかさが、その趣を一層高めていると思います。
あまりに見事で、二酸化炭素で?作品に瑕瑾が付かない様に、呼吸にも気を使ってしまう程でした(笑)
蹄齋北馬の「大名上野往還之図」は大名行列を前後の上空から捉えたもので、一直線の構図と行列の蟹股にシュールな雰囲気が宿っていました。この人は北斎の弟子らしい北斎の弟子だと、僕は思います。
着物も素直な鮮やかさがあって、綺麗でした。無料でしたけど、記憶から消えそうに無い展示でした(笑)
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