東京都美術館 生活と芸術-アーツ&クラフツ展 ウィリアム・モリスから民芸まで

#工芸

券を頂いたので行って参りました。
そもそも、アーツ&クラフツとは何ぞや、と思うのですが、これが中々複雑なようです。とりあえずは、大量生産の粗悪品に手作りで対抗しようという運動らしいのですが、結局富裕層しか買えなかったそうです(笑)横の御婦人は中産階級の勃興との関連について、話していました。

最初の方は、まずは色々な形の椅子が。一つ一つが凄い芸術品、というものではないですが、それぞれ個性はあります。一人一人の生活を大切にする思想が、良く伝わって来る最初の展示です。

アーツ&クラフツで織物は重要な位置を占めているようで、特別に書きたくなるようなものも、あんまり有りませんでしたが、どれも丁寧な仕事でした。
中島誠之助さんは良く偽物に対して、インテリアにしたら良いんじゃないか、というのですが、それは偽物は芸術品としての力が弱いから、日常に馴染む所があるんですね。
アーツ&クラフツの芸術は日常の為にあるのですが、この日常との親和性を偽物としてではなく、非常な繊細さを持って達成しているもののようです。

「壁紙見本「果実」あるいは「柘榴」」は古い博物誌を思い出させる、写実的な繊細さ。

フリップ・ウエッブの「燭台」を始め、作品を一つの部屋に仕立てて展示している一角が有りましたが、こういうのを見ると、茶道の様に空間をデザインする役割も果たしているのだな、と思います。

アーツ&クラフツは隣接領域にアール・ヌーヴォーやジャポニズムがあるようで、ウィリアム・ハウソン・テーラーの「壷」がそういう、艶めきのある赤色を帯びていました。

「大法衣」は袈裟に似た光沢が有って、東西問わず、宗教家が醸したい雰囲気は似ているものなのかな、と思いました(笑)

ステンドグラス「聖アグネス」は半眼が美しい、清らかな像で、とても惹かれます。

と、洋物も充実していたんですが、民芸関係の和物も揃っていて、これも何でもありの逸品揃い。

こ、これは、と感じつつ、横目にチラッと入ってきたのは木喰仏で、「地蔵菩薩像」が福耳も柔らかそうな、肉感のある作品。光背の梵字が殆ど消えかかっていて、民芸らしい古びた味わいもあります。

李氏朝鮮の「白磁壷」は志賀直哉が持っていた逸品だそうで、真っ白な美しさに、ちょっと歪んだ造形が絶妙です。こういう朝鮮の物が民芸の原点だそうで、民芸の部の最初のほうに置かれているのには、深い意味があります。
それにしても、朝鮮半島に住んでいる人たちは、今と昔では結構気質が違った、なんて話も聞きますけど、朝鮮渡来の物には洗練された美意識を感じさせられることが多く、激しいものはあんまり無い様な気がします。

服は沖縄のものも良かったですが、「アイヌのアットゥシ」がより異文化の芳香に満ちていて、美しかったです。

河合寛次郎は流石。粗野にして優美で、先進的で作風が豊富です。沢山あってどれも眼福でしたが、「黒地黄釉流描線文鉢」がこげ茶色の下地に垂れた釉薬が、食欲をそそる様な美しさで、見事でした。

7代乾山ことバーナード・リーチの作品も色々あって、「ガレナ釉筒描ペリカン図大皿」が大らかで確かで、異文化的な所もある一皿。

棟方志功は代表作の「二菩薩釈迦十大弟子」が出品されていました。生で見る棟方志功の線は印刷とは格段に迫力が違います。まぁ、これも印s(以下略
当然ながら、生半な奇人ではなかったことがひしひしと伝わってきます。

民芸の豊かさ、生活に対する問そのものに触れることが出来た、良い展覧会でした。「三国荘」の再現展示も凄かったです。多方面から品を集めたられた、主催者の方々はお疲れさまです(笑)

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