アーベントロートの芸術 アーベントロート 交響曲第9番 二短調Op.125「合唱付き」ライプツィヒ放送交響楽団

#音楽レビュー

第九は欧米では特別な音楽なんだそうですが、60年前なら尚更でしょうねぇ。
毎度ですが、弦にしてもティンパニにしても、どっしりとした音で刻んで行くが特徴ですね。
フルトヴェングラー辺りと比べると、7分辺りとか、流石にちょっと平べったいですけど、速めのテンポで、殺陣師が疾走する様に進む音楽は魅力的です。
9分40秒辺りの溜めなんか、とても特徴的。非常に気分的なものを感じますけど、音楽なんてある面非常に気分的なものですから、そういうものが素直に出せた昔の指揮者は良いなぁ、と思いますね。今は理詰めで説得しないと、動いてくれないそうですから(笑)

第2楽章は全体的に音が小さめでしょうか。5分半辺りの荒れ狂い方は流石。この楽章は、リズムで訴えかける様な演奏が可能で、好きな楽章なのですが、そういう演奏ではないですね。クナに近い系列の指揮者だな、というのは感じます。迫力のある演奏なのに、聴いていて落ち着く感じです(笑)

第3楽章のアダージョは落ち着いた指揮者がやると、眠気先行の音楽になってしまう可能性がある楽章ですが、アーベントロートはその幣に陥る寸前の所を、もろもろの演奏記号を生かすことで避けています。
13分辺りのヴァイオンリンのスラーも自然に強調されていて、極めて美しいです。この静かな柔らかさが、強奏になった時に対比として効いて来ます。

第4楽章は、バリトンの時代がかりつつも、発声法発声法していない歌い方が良いです。霞がかったような録音が、力強くもエンヤの様で、骨董的な風味も醸します。
アーベントロートの音楽からは、終始目分量な感じがするのが気に入っているのですが、16分辺りからの悠々とした、丁寧な集中力は、第九が特別な音楽である事を意識させてくれます。力強く、たからかで、ベートーヴェンの本領が出ている演奏です。
加速の前のゆっくりした所が強調されていて、最後のプレストの突っ走りが生き切ります。ベートーヴェンもそういう、緩急を良く考えていた、作曲家だった様に思います。

良い演奏で、終わった後は何か年が明けてしまったような、雰囲気。後ろ髪を引かれつつも、新たな気持ちになります(笑)ブッシュ・ド・ノエルといいますか、焼かれて火がちらちらしている薪のような音楽だと思います。

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