太田記念美術館 江戸時代を旅してみよう 前期

#その他芸術、アート

続いて行って参りました。
ここの美術館の楽しみは、最初に置かれる肉筆画。
作者不詳の「仲ノ町風景」は懐月堂派の絵をちっちゃくして貼って、町衆に仕立てたような絵。これが、奥行き感が皆無の絵で、その素人臭さが、逆に面白かったです(笑)
長谷川雪旦の「日本橋」は一風変わった絵。無所属な感じで色使いも控え目。
骨しか描かれていない様な群衆なんですけど、老若男女職業が大体分かるという、似たようなのを観たことが無い群衆図です。江戸名所図会の挿絵を描いた画家なのだそうです。
今履歴を調べたら雪舟に私淑と書いてあったので、あーなるほど、と思いました。雰囲気はちょっと残っているかもしれません(^_^:)
蹄斎北馬の「三囲渡頭風景」は沼のような川に、細かな雪が美しい作品。

企画名から予想できる通り、充実していたのは広重。
「日本橋朝之景」はこの前テレビで、版元に改変されて、通りに行き交う人の数を増やされた、という事をやっていましたけど、こちらはオリジナル。江戸でも賑やかなほうが売れ(ると思われ)たわけで、広重の絵を観て江戸情緒といったりしますけど、それは広重の中だけに存在するものでもあったのかもしれません。
「昌平坂聖堂」は解説で広重の雨の表現を褒めていましたけど、ボストン美術館展の下絵とかを見る限り、やっぱりこれは彫り師の伎倆みたいです。
「土山春之雨」の小雨でいて針金の様でもある、雨粒の表現も素晴らしく、これはちょっとやそっとじゃ復刻できない感じです。
北斎の「ゑちぜんふくゐの橋」は当時あったという、半分石橋半分木造の変わった橋。上のプルシャン・ブルー(やっぱり多分)のぼかしが、たまらなく良い味が出ていました。

広重は他にも「上総矢さしが浦 通名九十九里」の深さを想わせる海の下で、人がみんなで網を引っ張っている図が、広重らしい大きな視点です。地球の丸みすら感じさせるような迫力と、人の営みがありました。
「芦に鴨」は鴨の羽の質感が素晴らしい作品ですけど、観ていると自分の視点の角度を見失いそうになる絵で、そこに尖鋭的な味わい深さが。
「四日市 三重川」は有名な転がる笠を追いかける絵ですが、何度観ても風の描かれ方が見事の一語。

渓斎英泉の「時世美女競 東都芸子」は化粧をしている、女性の隙のある瞬間を描いていて、目が変に寄っています。その上、口紅がうわさの緑のもので、怖い感じに真実味があったかもしれません(笑)

鈴木春信の「虚無僧」は実にいなせで、こんな虚無僧はいたのでしょうか(笑)
鳥居清満はボストン展で出ていた作品が素晴らしく、注目しているのですが「初代嵐三勝 市川武十郎」が春信を恰幅良くさせた様な、瀟洒で無骨な良い役者絵でした。

地図が作品毎に付いていたりして、丁寧な展示で面白かったです。これからも浮世絵に即した、地味な企画を宜しくお願いいたします(笑)

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