東京国立博物館 特別展「染付-藍が彩るアジアの器」

#その他芸術、アート

続いて廻って参りました。
「青花龍波濤文扁壺」は龍のうねうねした紋様が、活動力に溢れています。詩経では魚がよく詠まれたりするんですが、それを美術の方面に置き換えると龍になるのかも知れません。
「青花宝相華文皿」はアラビア文字が書かれたお皿。景徳鎮の焼き物も中東の影響が強いようです。

カタログに書いてあるには「釉下彩の盛行を阻害していた要因は、技術的制約とは別の、ある種のタブーであるように思われます」とのことで、歌とか絵とか他の文化でも、そういうことは結構ありますよね。

各地の作品があるのが、この展覧会の良いところで、ベトナム製の「青花蜻蛉文茶碗」が呉須手と呼ばれるものを更に推し進めたような、くすんだ味わいが素晴らしい器。
ベトナムは東アジア文化圏の中に、最後に登場した国ともいえそうです。この器は中国的な洗練された型の中に、突然密林の文化が放り込まれた感じで、アクセントになっています。

今回結構感動したのが、「朝鮮の染付け」の一群。
「青花梅竹図壺」は枝ぶりが勁い、水墨画を壷に描いた作品。
「青花秋草文壺」は秋草でといわれる、簡素な作品で、たたずまいがなんとも清楚。
「青花蓮魚文瓶」は魚がゆらゆらしていて、面白かったです(笑)
「青花十長生文切子形瓶」は三角と四角が組み合わされた、角ばった瓶で、青の鮮やかさとと共に奇抜で清涼な雰囲気が素晴らしいです。
簡素さと前衛性が微妙に合わさっていて、楽しかったです。

明末に入ると急に作品が鮮やかになる感じです。
「青花楼閣山水人物図大皿」は放射状っぽく青い氷の棒に区切られた様な、場面構成が鮮やか。
「青花赤壁図鉢」は呉須手らしく、くすんだ色調がベトナム製のものに近い感じで、良いですねぇ。

「祥瑞寄向付」は日本からの注文を受けて作られたという、織部焼風の形が歪んだ作品群で、やっぱりほっとします(笑)日中の個性の差は、意外と鮮やかなのかもしれません。あっちの人材の選び方なんかにも、同様な所がありますよね。
「呉州染付牛文十二角水指」は角が均整じゃない所が、中々深い味わい。

ここらへんで、お姉さんが数人に解説しながら回っているのを発見。ちょっと遠くから、しばし聞いていました(笑)
ションズイについて、お姉さんによれば人名だという説がある、という程度に留まっていたのに対して、カタログにはかなり確定的に書かれていて、どちらのニュアンスが正しいのかは分かりません(笑)

ここからは「伊万里と鍋島の染付」。
伊万里焼といえば、中島誠之助さんが白洲正子さんが、伊万里焼は美術品として二流、と言っていたというのを引いて、その通りだと慧眼を褒めていたのが印象的ですが、伊万里の第一人者ならではの謙虚さだったのではないでしょうか。今回の展覧会を観て、伊万里は絵画で言えば浮世絵にあたる分野だな、と想像していなかった豊かさに、新しい世界を発見させられました。

「染付蓮鷺文三足皿」は余白が美しい、調和しきった作品。
「染付雪景山水図大皿」は繊細かつ茫洋としていて、立体的でもあって素晴らしかったです。

最近異なる人が、清代の焼き物は綺麗だけど平坦で好きじゃない、というような事を言っているのを、それぞれ関係ないところで読みました。もしかして、焼き物通の間で清代の焼き物はあまり良くない、という共通理解があるのではないか、とひっかかっているのですが、この「清時代の染付け」のコーナーも作品数が控え目。
「青花花卉文方瓶」の菊の花とか綺麗に描けていましたけど、もっと観ないと分かりませんね(笑)

「京焼と地方窯の染付」のコーナーは、やはりなんとなく典雅。
「染付子犬形香炉」は応挙を思わせる子犬が、実にかわいらしいです。
「染付鯉文大皿」は踊るような鯉に、なんとなく林十江の絵を連想しました。

「伊万里染付大皿―平野耕輔コレクション」はクセのある逸品が集まった、個人コレクション。
どれも面白くて、選べないですけど、「染付海賦文大皿」がイソギンチャクみたいな波が特徴的な、よく分からない蓬莱の風景が印象に残りました。

この展覧会で素晴らしかったのは、最後にお皿を触れるコーナーがあったことで、これは全ての陶芸の展覧会でぜひつけて欲しい所です。

この日は夏休み中の企画があらかた終わる日で、駆け足で本館のその他の展示も。

特別展示の顔となっている絵は、宣教師のシドッチが持っていたそうです。
この人は、新井白石が感心するほど頭の良い人物だったそうですが、ゴッドのこととなるといきなり非論理的なことを言うので閉口した、とものの本で読みました(笑)
こういう死を賭しての布教ということとなれば、よく分からないのは現代の私たちも、新井白石と同じでしょう。
このマリアの絵は、どことなく官能的で、シドッチの信仰の中には、何か霊性と官能性が一体になったような世界があったのかもしれない。等と、当っているのか遠いのか良く分からないことが頭をよぎりました(笑)
靈妙にして艶美といった感じでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました