三月花形歌舞伎 通し狂言 染模様恩愛御書細川の血達磨(そめもようちゅうぎのごしゅいん) 3月25日午後の部

抽選券が運良く当ったので、行って参りました。
何も知らずに来たのですが、濃い作品でビックリ。

直前には八重洲ブックセンターに居たのですが、ちょっとした手違いで、東京駅を一周することに。
日生劇場にギリギリに着いて、開演2分前位に席を確保して、おもむろにパンフレットを取りに行ったのですが、目を通す前に会場が真っ暗に。
剣術師範が殺され、なるほど、あだ討ち物なのか、と思ってみていると、何やら男同士で恋文を交わし始め、そのまま濃厚なラヴシーンに突入。障子越しに、裸で抱き合っていた様です。

合間に読んだ雑誌の見本によると、衆道をBLとして再生せんとする染五郎さんの意欲作だそうです。作品の間中からカーテンコールまで手を繋ぎっ放し。
演る人によっては「そうだったのか!」と納得してしまいかねないので、染五郎さんだからこそ挑める演目、ともいえるかもしれません。
劇中何度も女性を蹴りまくるシーンがあって、こういうのは男尊女卑の延長であるな、と観察。だから時代と共に表舞台から消えて行ったのだと思いますし、鹿児島なんk・・・(以下略
正直観ていて面白くないシーンなので削ってしまえばいいとも思うんですけど、そうすると全体の思想性が損なわれかねない、という難しい所。
結局BLも、女性は下がっていろ、という女性の願望から生まれたもの、だともいいますので、実はこういう形でいいんですかね?

後半はいきなり火事が起こり、染五郎の大川友右衛門が蔵へ突入。そうか、国立博物館で細川家の秘宝が見られるのも、友右衛門のお陰なのか、いやフィクションか、と思いつつ観ていた(しかも書状しか救わなかったみたいです)のですが、凄まじい光の効果と煙幕でした。燃え盛る炎を身に纏い(最新技術らしいんですけど、詳細はホームページに載っていないですね。煙はちゃんと出ていました。)ロープで渡り、階段から転げ落ちる、といったハードな演技で、この激しさは京劇やスーパー歌舞伎を上回るのではないかと思います。

一般観衆にアピールしようという心意気の素晴らしい、舞台だったと思います。
ただ個人的には、ちょっと、観た後の心象が澄んでいないですかね。
最近の流行りものの傾向を見ていると、これ位のショックが丁度良いとも思います。
池袋で辺りでやると、歓呼の声で迎えられそうな、生きた歌舞伎でした。

追記:この作品は明治中期に作られたものらしく、芳年の浮世絵などと並んで(「大江戸の姫さま」関口 すみ子 (著)参照) 当時の価値観に基づいて江戸時代は酷い男尊女卑であったという「作られた歴史」を作った作品の一つだといえるでしょう。

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