東日本大震災復幸支縁 善光寺出開帳両国回向院 その8

#その他芸術、アート

「木造如意輪観世音菩薩座像」は陸前高田の金剛寺の秘仏だったのだそうですが、このたび流されて、白木で補修されて、今回の出開帳に。
リラックスした気品が絶大で、その気高くもゆるいオーラが部屋全体を包みます。素晴らしい秘仏といえましょう。

「木造地蔵菩薩立像」は被災地のために、せんとくんで有名な籔内佐斗司さんと芸大の学生で作ったらしく、この像のまわりでは薮内さんとせんとくんの噂話が。
菩薩立像ですが、親子地藏の名前があり、そういった関係性の二体で構成されており、やはりどこか童子らしい所があります。また、ご本人のお顔にもどことなく似ているのも、今回も同じです。

千住博さんの「浄土の滝」が部屋全体の背景に使われているのですが、美術的に観ると、どうなのでしょう。瀧らしい勢いが感じられないのが、不満のように思います。

善光寺出品文化財のコーナーでは高村光雲の金剛力士像が飾られていましたが、今回は約束事が守られておらず、目線はばらばらでした。手が異様に大きいのが特徴で、光雲らしい流麗な感じがあり、余り怖い感じではありません。

善光寺は聖徳太子から手紙を貰ったことがあるらしく「木造聖徳太子立像」というものも。太子信仰も担っているお寺なんでしょうね。

「木造阿弥陀如来立像」は4年前に解体修理したときに快慶工房での製作が指摘されたらしく、様式的にはまさに快慶のものです。快慶の他の作品に比べるとふっくらしているかな、といったところで、おなかも出ています。光背の精緻なまばゆさに目が行きます。

「銅造釈迦涅槃像」は珍しい銅製の涅槃像らしく、江戸時代の出開帳でも話題になって当時の文学作品に取り入れられているとのこと。余裕しゃくしゃくで寝ています。

一階のロビーには「びんずる尊者像」が飾られており、自分の悪い所を触ると治してくれるとのこと。これによってミュシュランでは三ツ星を獲得しているのだそうです。

同時開催の鳥居清長展はお寺に埋葬されているので、記念碑を建てるということで、その記念の開催。なんでも江戸時代から碑があったそうなのですが、関東大震災なのか、戦災なのかも分からないが、いつの間にかなくなっていたとのこと。いつのまにかというのが物悲しさを増幅します。やはり近年になって江戸文化が大分見直されてきたのと関連があるのでしょう。

碑自体も観て来たのですが、美人画の上半身を切り取ってレリーフにしているのですが、清長の本領は群像での相互のバランス、肢体の美しさにあるので、やや良さが伝わらない憾みもあります。難しいですが。

色々な方がお祝いの言葉を寄せていて、浮世絵の専門家の内藤正人さんが「本物」という言葉が使われていましたが、まさにその通りで、ドガの旧蔵の清長作品と同じものを持っている云々という事を書かれている人もいましたが、まさに世界レヴェルの巨匠なのです。

広重の本の巻頭に広重よりもゴッホという文字が大きく出ているとか、悲しくなりますけど、もっとしばらくたてば、広重を前面に押し出した方が売れるようになるのではないでしょうか。

「三虚無僧」は三人中女性が一人いて、他の二人の衣装も実に豪華でファッショナブル。時代の最先端の流行としての虚無僧を偲ばせます。みんな底が厚いぽっくりのようなものを履いています。

鳥居清満の「梅ヶ枝図」という肉筆画も出ていましたが、場面の文学的な迫力が狂気の域に昂まっています。

相撲の絵もあり雷電がいる時代の有名なものですが、柏戸が二人いるのはどうなっているんでしょうねぇ?

今回の展覧会はまだ春信を模倣していた頃の希少な初期作品が出ていて、区別ができないほどそっくりなのですが、人々の品や構図感覚には後年の物も感じさせます。

最期に「ご戒壇廻り」というのがあり、暗い回廊の中をロープを伝って「極楽の錠前」に触って出てくる、というものですが、浄土系の周囲は地獄の一本道を仏に導かれていく、というイマジネーションを具現化させたもののように感じました。

回廊中は何も見えず、特に東京では夜でもここまで暗くなる事は無いでしょう。そういう意味では昔より非日常的な感じがするはずです。

実質的に目をつぶっているのと同じなのですが、目を開けているとまた別種の感覚があるもの。期待される情報が来ていないな、と身体がいっているような気はします。

回向院は境内も花で満ちており、猫が道端で昼寝をしていました。余りにも動かないのでもしかしたら死んでいるのかとも思ったのですが、一周して戻ってくると、他の人があやしていたので、ちゃんと生きていたのだなと安心。

善光寺や陸前高田から貴重な品が来ていて、本格的な内容に出会える貴重な機会を戴きました。

拝観料などはすべて東日本大震災の復興支援に寄付されるそうですので、皆様も気軽な気持ちでぜひぜひどうぞどうぞ。

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