最近結構シューベルトが好きです。この深い情緒は他の作曲家では中々味わえません・・・という訳で、僕はシューベルトというと極めて内省的なイメージがあったんですけど、昔のヨーロッパの評論を訳した物に、とっつきやすいけど浅い音楽家で有る事は社会の常識、ではないですけど、そのような書かれ方をしていて結構驚いたといいますか、不意を突かれました。未完成とかポピュラーな楽曲が多いのが専門家の評価を下げさせているのかもしれませんし(ポピュラーな曲にも深いものは有る、といいますか深い方が圧倒的に多いです(笑))浅い音楽家が演奏すれば浅い音楽になり、深い音楽家が演奏すれば相応に深い音楽になるという側面が強く有るからかもしれません。そう考えると近・現代の名演奏家の演奏が手軽に聴ける今だからこそ感じた違和感だったに違い有りません。
という訳でといいますか、当初は感想を書く気は無かったんですけど、あんまりこの演奏が良いので、驚いた勢いで書きます(笑)2人とも名演奏家中の名演奏家ですけど、それに加えて相性が抜群だと思うんですよね。内田光子の圧倒的な深みと妙なる感情表現は相変わらずで、ボストリッジにもこれは同じ事が言えるんですが、ポストリッジの歌唱はどこか明るさが有るんですよね。楽天的という感じは全然しないんですけど、この要素が程よく効いていて、音楽全体のバランスを絶妙な位地に置いていると感じました。美しくも分厚い雲の後ろから一条の光りが射していて、雲全体も神々しくライトアップしている。といった感じの演奏だと思います。
内田のピアノは盛り上がりそうな所で抑揚をつけて沈んでいくんですよね。ボストリッジは相変わらず上手くて見事です。内田のCDの中でも最も楽しく豊かな物の一つだと思います。モーツァルトのCDより有る意味楽しいかもしれません(笑)
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