シリーズで図書館に入荷したので、どんどん聴いて行きます。
第1楽章から、テンポの扱いが伸縮自在で、相変わらずの自由度です。5分の力で進行する、不気味さが中々の雰囲気です。
5分辺りからの甘い旋律は、録音が流石に古く、面白くもおどろおどろしく聴こえるのですが、実際に聴けば多分相当、透き通っていたのでしょうか(笑)?
急に転じてからの推進力がらしく、チャイコフスキーのインターナショナルな音楽作りにアーベントロートのローカル性が上手く調和して、内容が充実した音楽になっています。
と、思ったのですが、実はチャイコフスキーの音楽は本来こういうもので、近年の演奏が本来より洗練された曲に仕立ててしまったのかもしれません。
第2楽章はテンポが掴み難い、微妙に崩しながら歌った演奏で、優雅というより美しい仕上がりになっていて、好きですね。
この指揮者は時に、テンポの扱いが細波のようですが、これがアーベントロートの、音楽の呼吸なのだと思います。
第3楽章は2分辺りの木管がやや煽られ気味に吹いている所に、指揮の勢いを感じます。
6分辺りから速い所に入りますが、ティンパニのリズムがあまりに確りと、轟然としているので、ツァラトゥストラ(以下略)でも始まったのかと思いました(笑)
7分辺りでいきなりリタルダンドがかかって、激遅になるのですが、このテンポの遅さはなんでしょう(笑)笑いが止まらない。そして、8分辺りからいきなり高速になります。
フルトヴェングラーと比較されていたというのが良く分かります。
第4楽章は冒頭の旋律の様に、遠くに音を投げて、それがゆったりと減衰していくような、余韻の残し方が良いです。
4分辺りのヴァイオリンがゆったりと音程を上下する所も、綺麗にしようと思っていない雰囲気(多分)が美しいです。
7分辺りのショスタコーヴィチのような行進を経て、ほの暗い雰囲気を残して、音楽が終了します。
なんとも山あり谷ありな、地図の無い登山の様な音楽でした。聴く人たちも、その時その時の演奏を、楽しみにして聴いていたに違いありません。
―――と、ここまで書いて、宇野先生の解説を読んだんですが、89年の宇野先生のテンションはアーベントロート並ですね(笑)
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