国立西洋美術館 ラファエロ | Raffaello

美術

行って参りました。


物凄い混み具合で早めに行ったにもかかわらず30分待ち。隨分日焼けいたしました。周囲からはこれだけ混んでいるとかえって記念になるとという呟きすら聴こえました。

冒頭のあいさつ文によるとラファエロ展はなかなか開くことが難しいらしく、作品を集めるのが大変であるとの事。
貸出先の美術館は有名どころが多岐に渡っており、日本の西洋美術の拠点の美術館が気合を入れて集めてきたことが分かります。

「ラファエロ・サンツィオ 自画像」は有名な自画像で、首が長く涼やか。あごは上がり気味です。「若い男の肖像」などにも共通するラファエロの絵の特徴でもあって「 無口な女(ラ・ムータ)」の前でも、横の女性二人組みが首が長いと呟いていました。

画家としての特徴は他の画家の作品と比べると分かってくるもので「アミーコ・アスペルティーニに帰属 東方三博士の礼拝」は細密に描かれながらも中世のイコン画の象徴的な表現から抜け出していないのが感じられます。

それと比べるとラファエロの「父なる神、聖母マリア」など生身を感じさせる血が通ったような美しさがあるのが特徴で、その高雅な表現はプレ・ルーベンス的。

「聖セバスティアヌス」など十代で完成度の高い作品がたくさん描かれており、早熟の天才であるというのも特徴。すでにその頃には親方と呼ばれていたそうです。衣の飾りは豪華で綺麗に描かれており、矢を持つ手などふんわりしていて仏像のようです。

モナ・リザの背景の様に肖像画の後ろに雄大が風景が描かれているものも多く、「エリザベッタ・ゴンザーガの肖像」の解説によると「フィレンツェで習得したフランドル風の風景」という説明がありました。

「赤い服を着た若い男の肖像」も同じように風景を背景にした肖像画で、画面端にそれぞれ柱が立っている構図は、アイルワースのモナ・リザと同じです。

「聖家族と仔羊」はダ・ヴィンチのものを参考にして描いたものらしく、老人・女性・子供・動物その他と色々なものが一つの画面に集まったダ・ヴィンチらしい構図の良作。

「カヴァリエル・ダルピーノ (本名ジュゼッペ・チェーザリ) 死せるキリストの運搬(ラファエロ作品のコピー)」はラファエロのコピーながらも死体の重さが良く表現されています。

「Ⅲ. ローマのラファエロ ― 教皇をとりこにした美」のコーナーではヴァチカン宮のラファエロの作品群が展示されていて、かなり壮麗です。日本でも安土城辺りが残っていればこんな感じなのでしょうか。

「アテナイの学堂」の複製も飾られており、流石に壮大です。画中の地球儀はちょうどトルコあたりを中心にこちらを向いています。

彼の人生の解説を読んでいると、余りにも多くの人の影響を受けていることに驚かされます。また人脈も貴族や学者など幅広く、そういう画家は今までいなかったとのこと。

ラファエロの絵はそういう意味でルネサンス期の集大成であって、また影響を受けるに値する才能があちらこちらにあったルネサンス期特有の才能でもあるなと感じさせます。

代表作と目される「アテナイの学堂」は彼のそういった個性が非常に良く表れている絵画なのではないでしょうか。

ダ・ヴィンチは自然に興味があり、ミケランジェロは人体に興味があり、ラファエロは人に興味があったのかな、と感じさせます。

ミケランジェロはルネサンス期のヒューマニズム、人間中心主義を背負っているといわれていますが、ラファエロはギリシャを受け継いだ時代としてのルネサンス期を背負っているのかな、と思わされます。

「ペリン・デル・ヴァーガ (本名ピエトロ・ディ・ジョヴァンニ・ボナッコルシ)聖母子 」は細部の影響をラファエロに受けているらしく、奇麗に描けていますけど、いわゆるどや顔がすごいです。

「ジローラモ・デッラ・ロッビア 聖母子と幼い洗礼者聖ヨハネ」は横のカップルがジローラモという言葉に反応していましたけど、会期中何度もこういう感じで反応されるのでしょう?

また素描にもとづいて版画を彫られることでラファエロのデザインは普及したらしく、マルカントニオ・ライモンディが素描を下に作った「嬰児虐殺」は傑作の呼び声が高いのだそうですが、傑作なんですかねぇ?

蒸留水のような画家で、人生も心なしか、ダ・ヴィンチやミケランジェロよりすっきりしている気がします。

やはり血潮に満たされた生身を感じさせる、天上的な描写が一番印象に残ります。これだけの作品が集まるのは実に壮観でした。ありがとうございました。

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